笠間製本印刷様 Vol.1

プリネクトユーザー

株式会社 笠間製本印刷様

原価管理を徹底するためにプリネクト・ワークフローで作業時間の「見える化」を進める
工程自動化で実現した省人化と作業時間短縮

「うーん、ワンクリックというわけにはいきませんけど(笑)」

同社の工務担当スタッフは、大型モニターにMIS(プリントサピエンス)とプリネクト プリプレスマネージャーの画面を映し出し、電子作業指示を行いながらこうお話されました。「ワンクリックとはいかない」とは、[確認のメッセージ]への[了解]をクリックするためで、作業指示自体は事実ワンクリック。「ワンクリックも許さない」というのは田上社長の口癖で、自動化を極限まで推し進めたいという強い意欲の表れです。刷版出力までの製版作業自体は、すでに面付けパターンや使用印刷機等が設定されているためMISをワンクリックすることで終了。刷版出力(スープラセッター)が終われば自動的に指定された印刷機を経て、ポーラー断裁機による断裁まですべてCIP4-JDFの指示通りに進んでいくことになります。この間、複数のプリネクト・アプリケーションが作業をしているものの、各工程を担当するスタッフはほとんどそれを意識する必要がありません。

自動化の目的は、もちろん省人化と作業時間短縮によるコストダウンです。しかし、田上社長の「ワンクリックも許さない」には、もう一つ別な意味も込められています。
「間違えるんです、無駄なことをすると。いくら注意しても、人は100%ミスをなくすことはできません。」 だから自動化を進めて、人が介在する余地をできるだけ減らす必要があるのです。クリックする回数が増えれば、ミスの可能性はその数だけ増えていきます。

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「時は金なり」を地でいく時間単位の原価計算
実はプリネクト・ワークフローの採用は、各種工程の自動化による物理的なコストダウンだけでなく、作業時間の「見える化」を実現し、スタッフの原価意識を高めるためにも大きな役割を果たしています。同社のコスト管理の基本は、「時は金なり」。 「当社は会長の時代から、通し枚数ではなく、1分何円という時間単位で原価計算をしていました。ですからたぶん、もう15年、20年前からですね。初期のMISを導入して、1点ごとにバーコードで開始時間と終了時間を入力して、管理していましたから。 確かにプリネクトの導入で、ジョブごとの進捗状況が見やすく、自動で表示されたり、便利にはなりましたけど、やっていること自体は昔から変わらないから、別に違和感はありませんでした」(田上社長) この、全工程をカバーする進行管理を担っているのが、プリネクト インテグレーションマネージャーです。このシステムは、ワークフローとオンラインで接続されているプリプレス、プレス、ポストプレス設備については、稼働状況をリアルタイムで表示します。制作やDTPなどのスタッフの管理は、作業開始と終了をジョブごとにバーコードで入力して行います。しかも同社では、すべての工程で各ジョブの目標時間を定め、それぞれのセクションにおかれた大型ディスプレー上に、残り時間が表示されるシステムになっているから、スタッフの緊張感はかなりのものになります。「残り時間が目に見えて減っていくので、時間に関する意識はものすごく出てきたと思います。今まで、なぜか朝礼が終わっても5分たたないと仕事を始めなかった人間が、すぐ開始するようになったり、いろんなところでムダは減ってきたと思いますよ。現場から、この仕事の前準備は今まで30分かかったけど、こうすれば15分でやれますとか、提案も出てくるようになりました。」

CtP、印刷機と段階を踏み徐々に自動化を進める
同社が本格的に工程の自動化と標準化に取り組み始めたのは、スープラセッターS105を導入した2008年頃のことです。それまでは国産機が1台あり、この1台のCtPを製版部門の3人で担当していました。自動化が進んだスープラセッターなら、同じ部屋で作業していたDTPのスタッフでも操作が可能だったことから、製版スタッフを配置転換されました。さらに、ISO12647-2の認証取得作業を進めるなかで、標準化の重要性に気づいていきます。「実は、8色機を入れた2003年からイメージコントロールはあったんですが、使い方を知っている人間が1人もいなかったんです(笑)。みんな、毎回毎回濃度計で測って、壺に触って色を合わせていました。それをハイデルさんから指導を受けて、印刷機1台ごとの刷版カーブを決めてカラーマネジメントをきっちりやったら、前準備時間が半分になりました。」(田上社長) 確かに、その分リピートものなどのデータをDTP側で調整する手間はかかります。だが、田上社長の判断基準は明確です。「億単位のコストがかかっている印刷機で30分時間を短縮できるなら、その代わりに、10万円のMacの作業時間が30分伸びてもいいじゃないですか。」

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自動化の実現を最優先した柔軟な対応
こうしてスープラセッターで製版・DTP部門をスリム化し、イメージコントロールやカラーツールボックスなどのプリネクトのカラーマネジメントシステムで印刷工程の効率化を実現した同社は、さらなる目標を掲げました。 「プリプレスの工程を自動化し、CtPからの刷版出しまで工務とか営業ができるようになれば、DTP部門の稼働率はもっと上がるなと考えて、ハイデルさんにお願いしたんです。」 ハイデルベルグ・ジャパンが出した答えは、プリネクト・ワークフローの導入による、工程の統合化と自動化でした。最大のネックは、面付けです。同社の主力商品である銀行通帳は、独自の面付けパターンを採用しています。それを、面付けソフトであるプリネクト シグナステーションとどのように適合させるか……。

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多くの印刷会社では、ここで二の足を踏んでしまいます。そして従来の作業ルールを変えず、ソフトのカスタマイズで対応しようと考えるため、ソフトがその実力を発揮できず、自動化の成果が十分に表れないケースも多いのです。しかし同社の場合、自動化の実現を最優先し、柔軟にルールを変更して導入にこぎ着けました。「現場からの抵抗ですか? それはなかったとは言いません。ルールを変えるのはリスクがあるし、慣れるまでちょっと大変だけど、絶対今より楽になるから、と説得しました。今7時までかかっている仕事が、5時には終わるんだよ、って(笑)」 確かに同社の場合、導入しやすい環境がそろっていたことは事実。銀行通帳が売上のおよそ半分を占めるため、限られた種類の面付けパターンの使用頻度が高い。また、スタッフの平均年齢が若いことも、新たなシステムの導入には有利な条件となります。 しかし、それにもまして重要なのは、生き残るためには自動化と原価管理がどうしても必要だという、田上社長の強い意志です。同社の「ワンクリック・ワークフロー」は、現在ほぼ完成に近づいています。

自動化で実現したコスト競争力を土台に次代へ
同社の売上は、50%を占める銀行通帳を中心に、証書やチラシなどを含めた金融機関向けの印刷物が85%を占めています。将来の目標は、通帳の取引先金融機関数で日本一になること。そのためには、自動化によるコストダウンに加え、さらなる品質の向上が欠かせなません。 「私が代表になったのが平成22年ですから、それから5年の27年までには、品質を私の満足できるレベルまで上げたいと思っています。現状ではまだ、つまらないクレームが年に数回あったりするんですね。そういうミスを起こさないような仕組みづくりを進めていく必要があります。」 もちろん長いスパンで見れば、銀行通帳がいつまで現在の形で存在するかも不透明です。だからこそ品質を高め、クリアファイルなどの新しい分野を開拓していかなければならなりません。 その意味で、工程の自動化は最終目標ではなく、新たな競争空間に乗り出すための土台づくりに過ぎないのかもしれません。

◆◆ 次号へ続く ◆◆

【企業プロフィール】
■笠間製本印刷株式会社
代表取締役社長: 田上裕之
設立:1962年5 月(創業:1875 年)
従業員数: 60名
本社所在地: 石川県白山市竹松町 1905番
TEL: (076) 275-9002
URL: http://www.kasama-jp.com/
事業内容: 預金通帳、小切手、 約束手形、預金証書・出資証券、金融機関用伝票、 一般印刷物、クリアファイル、ストーンペーパーなどの印刷物の企画・製造・販売

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