富山スガキ株式会社は、1877 年創業の歴史ある医薬品関連会社です。
富山売薬に和紙を卸す『スガキ紙店』として始まり、1926年には印刷業に進出して事業を拡大。以来、企画設計・デザインから印刷、加工まで一貫した生産体制のもと、医薬品/健康食品/化粧品関連の包装材全般を扱うパッケージ製造会社へと成長してきました。
チラシやカタログなど商業印刷物が多くを占める時代もありましたが、1980年代以降、医薬品包装に事業をシフトし確かな成功を収めました。その理由を代表取締役社長の須垣貴雄氏は、次のように話しています。「本社工場を改築した1983年が転機でした。価格競争が激しく、東京や大阪などでは全く勝負にならない商印に見切りをつけて、安定した収益が見込める医薬品包装事業へと大きく舵を切りました。エアシャワーなど医薬品包装に必要な生産設備も、このとき導入しました」
現在、パッケージやラベル、添付文書など医薬品の包装関連材が売上の2/3 で、商業印刷物はわずか10% ほど。残りも健康食品や化粧品のパッケージなどです。
医薬品包装分野は、厚生労働省の薬機法※に準拠した高度な品質管理体制が求められます。同社では長年にわたり最適化を図ってきた品質管理フローと徹底した防虫管理による衛生的な工場環境を構築することで、万全な生産体制を実現しています。また医薬品業界の最新動向と専門的知見、法改正の情報などをいち早く把握し対応することで、確かな地位を築いてきました。
それだけではありません。専門性が極めて高い医薬品包装分野で同社が成功を収めた理由、それは使う人の立場を考えたユーザビリティの改善と提案でした。須垣社長によると「約10年前から設計技術者やデザイナーが病院や調剤薬局を訪問し、薬剤師など医療関係者から直接意見を聞いて、パッケージの構造やデザインを改善し、製薬会社に提案している」とのこと。
さらに「新しいパッケージの有用性を評価・検証するため、大学など研究機関との実証実験や共同研究なども続けている」そうです。製薬会社が考えてもいなかったパッケージの利便性を、客観的データと共に提案できることが、同社の強みでした。こうした独自の開発力で実用新案や意匠権も数多く有しています。
※「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
2018年4月、同社は医薬品包装の新たな製造拠点として延床面積約8,000平米の立山工場を竣工しました。それにあわせて増設された製造ラインのひとつがハイデルベルグのスピードマスターXL106-7+Lでした。
生産管理部 研究開発課 担当課長の長谷川譲氏は、XL106を導入した経緯を次のように語っています。「選定当時のキーワードは『合理化』『生産性』『スキルレス』の3 つです。これらを重視してdrupa2016を視察した際、ハイデルベルグブースで行われていた8 分間で3 つのジョブを印刷するPush to Stop コンセプトのデモにインパクトを受けて、XL106 を詳しく調査するようになりました。導入の決め手はXL106 の自動化テクノロジーですが、最も高く評価したのは特色の管理が可能なインプレスコントロールでした」
インプレスコントロールの色管理はLab ベースによるもの。プロセス4 色から特色まで幅広くカバーできるので、特色を多用するパッケージ印刷には最適でした。「他社はCMYKしか管理できなかった」と長谷川課長はXL106 の優位性を指摘しています。スキルレス化による人材不足解消を指摘するのは生産統括本部 本部長の須垣元雄氏です。
「製薬会社さんとの品質契約では、特色ベタの許容範囲を取り決めています。このため機長にはその範囲内に色を収める極めて高いスキルが求められます。ただ機長候補となる中堅社員が少なく、若手の成長を待つ余裕もないので色管理のスキルレス化が急務でした」
2018 年2 月、新工場に納入されたXL106 は、世界で2,000台目となるXL106 の記念モデルです。同社にとっては添付文書を印刷しているスピードマスターSX74 に次ぐ2台目のハイデルベルグ機で、本格稼働がはじまるとすぐ、その実力を遺憾なく発揮しました。
「給紙トラブルが全くなく、フィーダからデリバリまで用紙搬送が極めて安定している」「キズやコスレは一切ない」と長谷川課長は絶賛。今まで2 工程かかっていた6 色+ニスなど多色刷りの仕事もワンパスで効率良く処理できるようになりました。平均ロットは5,000 ~ 6,000枚で印刷速度は毎時13,000 ~14,000 枚。「生産性」は既設機と比べて30 ~ 40%UP しました。
同社は白板紙を油性インキ+水性ニスで、特殊紙をUV インキ+ UVニスで印刷し、必要に応じて水なし印刷にも対応しています。こうした複雑な運用でも色ムラによるトラブルや刷り直しは一切ありません。現在は2 名一組2 シフト体制でXL106 を運用し、機長には数ヶ月の研修を受けた20 代の高野済和さんが抜擢されました。
当初の計画通りインプレスコントロールによって「スキルレス化」「合理化」と品質安定化が図れ、人材不足解消という課題もクリアできました。須垣社長も「製造プロセスを標準化して、若手社員にも理解できるようにする、という新工場のコンセプトにXL106 は見事に合致している」と喜んでいます。
富山スガキ株式会社
本社/本社工場:〒939-8585 富山県富山市塚原23 番の1
TEL.076-429-3553(代表)
FAX.076-429-5955
立山工場:〒930-0272 富山県中新川郡立山町塚越234-2