株式会社大鹿印刷所は、1900 年(明治33 年)創業の老舗パッケージ印刷会社です。
岐阜県揖斐郡大野町に本社を構え、主に和洋菓子・食品など観光土産を中心とするパッケージ関連の印刷物を幅広く手がけています。
その範囲は貼り箱・折り箱から、包装紙、トレー、手提げ袋、しおり、シール・ラベル、販促用パンフレットまで多岐に及びます。
また商品づくりをゼロからお手伝いするすぐれたクリエイティブ能力、印刷から後加工、製函、納品まで高品質で魅力的な製品を生み出す卓越した生産能力は、同社のビジネス成長の原動力であり、他社との差別化を図る大きな強みになっています。
印刷部門では5 台のハイデルベルグ印刷機が基盤となって、あらゆるジョブに対応。
厚紙印刷部門には2 台のスピードマスターCD102-6-LX UV(コーター付き菊全判6 色UV 印刷機)とCD102-2+L(コーター付き菊全判2 色印刷機)、普通紙・薄紙印刷部門にはスピードマスターSM102-4(菊全判4 色機)に加えて、最新のスピードマスターXL106-5(菊全判5 色機)を擁しています。
最も新しいXL106 は「Push to Stop」をコンセプトとしたdrupa2016 モデルで、今まで使っていた他社製印刷機2 台(菊全判4 色機・5 色機)の代わりに2017 年1 月に導入されました。
2 台を1台に集約した経緯について、大鹿道徳社長は次のように話しています。
「XL106 なら1 台で2 台分の働きをすると、ハイデルベルグから勧められたのがきっかけです。国内の導入ユーザーを何社か見て、予備紙が少なくなる、準備時間が短縮できる、省力化にもつながると判断し、導入を決めました。2 台は無理でも1.5 台分の働きをしてくれれば、厳しい価格競争のなかでも、コストを抑制して収益向上が見込めると考えました」
XL106 の導入効果はすぐに現れました。
今まで30 分かかっていた前準備時間は導入直後から15 分へと短縮でき、その後も1 分、2 分とさらに短くなり、現在はわずか13 分で仕事替えが終わります。
大きな理由は、全版同時・全自動で版交換を行うオートプレートXL2、版交換と同時にブラン洗浄を行う全自動洗浄装置、仕事替えのプロセスを最適化するインテリスタート2 など、XL106 に搭載された高度な自動化技術の数々でした。
今までの印刷機は版を交換してブラン洗浄を済ませるまで約10 分かかっていましたが、XL106 では版交換とブラン洗浄がわずか1 分半で同時に終了します。
フィーダやデリバリ、印圧の設定などもプリプレスから転送されるジョブデータにもとづいて自動的にセットされるため、次の仕事に素早く取りかかれます。
さらにインラインのカラー/見当測定制御システム「プリネクトインプレスコントロール2」も、色合わせの手間と時間の削減に貢献しました。
刷り出しを開始すると印刷機内部のカメラが色と見当を測定し、必要に応じてインキ量を制御。目標とする基準値に達するとグリーンランプが点灯し、そのまま印刷速度を上げて本刷りへと移行できます。
印刷中は最高速でもつねに基準値内に収まるように測定・制御を続けるため、極めて安定した印刷品質が実現できます。
まさにハイデルベルグが提唱する「Push to Stop」を具現化した革新的なテクノロジーのひとつ、それがプリネクトインプレスコントロール2 なのです。
同社では念には念を入れてオペレータによる抜き取りチェック(60 枚ごと最大3 回)を続けていますが、それでも色合わせにかかる手間と時間は大きく削減できました。
生産部部長の浜武信義氏によると「XL106 ではΔE が1 以内の基準値印刷を100% 実践しているため、ロット間の色ムラがなく、導入以来、色に対するクレームは全くない」とのこと。
もちろん、プルーフとのカラーマッチングにプリネクトワークフローのCMS が寄与していることは言うまでもありません。
ハイデルベルグ機の担当は初めてという西脇機長も、「色がぴたりと合う、誰が刷っても同じ色が再現できる凄い印刷機」と驚きを隠せない様子です。
同社ではハイデルベルグのプリネクトワークフローによってプリプレス・プレス・ポストプレスの各工程をネットワーク統合し、プリプレスのジョブデータを印刷機や断裁機の自動プリセットに利用しています。
新しいXL106 では最大30 件のジョブデータを受け取ることができ、印刷機コンソールの画面で作業効率の良い順に自動ソートが可能。必要に応じてオペレータがジョブを入れ替えると、そのたびに仕事替えのプロセスも自動的に最適化されてゆきます。
西脇機長にとって、毎朝の日課であるジョブリストの確認・変更作業は、XL106 の生産性を高める上で特に重要な作業のひとつです。
導入から半年以上が過ぎた現在、同社はXL106 で1 日8 時間平均18 ジョブ、最大で24 ジョブをこなしています。通し枚数は平均3,000 枚で、普通紙なら毎時18,000 枚の最高速で処理しています。
月平均の通し枚数も、すでに入れ替えた印刷機2 台分を超えています。
オペレータも4 人から2 人へと半減しました。導入前、「1.5 台分できれば充分」と語っていた大鹿社長の期待を超える生産性を、XL106 がもたらしました。こうしたXL106 の並外れた生産性は数字が証明しています。
生産部課長の古田広行氏によると現在の総合設備効率(OEE)は36%。厚紙印刷用のCD102-6-LX が約20%、業界平均が20 ~ 25% 以下なので、XL106 の生産性は傑出しています。
今は用紙の積み替え作業に追われて、印刷機のスピードに人が追いつかないこともあるそうです。このため、今後は用紙サイズの統一などで、生産性のさらなる向上を目指しています。
すでに選定作業にも着手していて「運用がはじまれば、前準備時間10 分が目標になる」と浜武部長は力説します。
西脇機長も「XL106 の生産性はまだまだ上がる」と手応えを感じています。
究極の目標は印刷機を止めることなく、自動運転で刷り終える「Push to Stop」コンセプトの実現です。
それは大鹿社長が指摘する「オフセット印刷のオンデマンド化」そのものです。
株式会社大鹿印刷所
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