鹿児島市北部の山あいに本社を構える協業組合ユニカラーは、特殊印刷の世界では国内屈指の実力を誇る印刷団体です。
1974 年に県内の印刷5 社が製版協同組合をつくり、内4 社が1977 年に現在の協業組合を結成しました。
零細企業が生き残りをかけて合併という道を選んだわけですが、その道は決して平坦ではありませんでした。しかし、現理事長の岩重昌勝氏が先頭に立ち、改革を進めることで事業を軌道にのせてゆきました。
2004 年には10 灯のUV ランプを搭載した菊全判6 色印刷機を導入し待望の特殊印刷分野に参入。その理由について岩重理事長は次のように振り返っています。
「色校の立ち会いでOK を貰っても、ドライダウンで色調が変わり刷り直しというトラブルが重なって、対応に苦慮していました。そんな時、ハイデルベルグが主催するUV セミナーに参加してUV 印刷のメリットを知り、これだと確信しました」
2001 年、ハイデルベルグ・ジャパンが開催した「UV Inforum」が、同組合の将来を決定づけました。
現在は厚紙、プラスチック、段ボールなどのパッケージ印刷から、ラベル印刷、レンチキュラー印刷、抗菌印刷、地元の間伐材を再利用した竹紙印刷、さらにはノベルティグッズ、ペーパークラフトまで幅広い仕事を手がけています。
近年はデジタル化に積極的に取り組み、ハイエンドのデジタル印刷機を2013年に導入。
損紙ゼロのデジタル印刷で、原反コストの高いクリアファイルやレンチキュラー印刷の低価格化に成功しています。さらに2016 年にはハイデルベルグのバーサファイアCV を導入し、デジタル印刷の守備範囲を一段と広げました。
導入理由について岩重理事長は次のように説明しています。
「年賀ハガキ8 万枚の仕事を処理するために、バーサファイアの導入を決めました。
四面連刷ハガキなら他のハイエンドのデジタル印刷機でも刷れますが、単面ハガキで宛名のバリアブル印刷もあったので、このクラスのデジタル印刷機が必須でした」
導入に際しては、他社製マシンとの比較・検討も行いましたが、性能面、コスト面でバーサファイアCV が抜きん出ていたと常務理事 製造部長の新勝彦氏は話しています。
「用紙を一枚一枚エアで吸着して給紙するバーサファイアCV は、コロだけで給紙する機械とは異なり給紙性能が抜群にすぐれていました。
印刷テストでは他の印刷機が300 枚程度でスキューして紙づまりを起こすのに、バーサファイアは1,000 枚通してもトラブルなく印刷が続けられました。
A3サイズでスピードがあまり落ちないことも、バーサファイアならではのメリットですね」
バーサファイアは、エアによる紙さばきと給紙によって紙づまりを防止します。
また大量に印刷を行う際には用紙のスキューや紙づまりの原因となる紙粉などの影響を受けることなく、安定した搬送で生産することができます。
こうした生産機としての安定性を高く評価すると同時に、コスト面のメリットも採用の決め手となったと新常務理事は強調しています。
「他社から提案があった印字率によってカウンター料金が変動する方式だと絵柄を見ないと原価が分からないので、正確な見積りを書くことができません。その点、バーサファイアCVはカウンター料金にトナー代が含まれているシンプルな料金体系の提案でしたので、原価管理が容易に行えると思いました。
また、モノクロ印刷の料金で、2色刷りができるというのは、大きなメリットになると思いましたし、現実に利益にも大きく貢献しています。バーサファイアはランニングコストも、イニシャルコストも満足ゆくものでした」
実運用が始まると、バーサファイアに対する同組合の評価はさらに高まりました。そのひとつが通紙性の良さです。
純白ロール38.5kg の薄紙やトレーシングペーパー、さらにはミシン目を入れた用紙もトラブルなく通せるため、付加価値の高い製品開発に役立っています。
なかでも日めくりカレンダーは365 日分を続けて印刷・積紙して、丁合い作業なしでそのまま後加工に回せるため、少部数でも効率良く生産できます。
アンカー処理なしで、単面ハガキから名刺、封筒、ラベル、チラシまで幅広い仕事がこなせるため、「小型オフセット印刷機3 台で処理してきた相当部分を肩代わりしてくれている」と岩重理事長は満足げです。
今まで使ってきた菊半裁判2 色機は休眠状態で、その他の2 台もバーサファイアが苦手とする窓付封筒や包装紙の印刷でしか出番がありません。
工場主導でオフセット印刷機からバーサファイアへと印刷方法を変えた同組合ですが、営業やクライアントからのクレームはまったくありません。
バーサファイアを担当する枚葉印刷課の大久保宗紀氏は、大幅な時間短縮が可能になったと話しています。
「従来のオフセット印刷機は、色替えやブランケット洗浄などの仕事替えに30 分以上かかっていましたが、バーサファイアは即座に印刷がスタートできます。一日の平均ジョブ数は10 ~ 15、ロットは1,000~3,000 枚が中心ですが、ときには2 万枚以上の封筒やハガキを印刷することもあります」
岩重理事長は、デジタル印刷機の導入がミスやエラーの削減、さらには働き方改革にもつながっていると指摘します。
「デジタルデータからダイレクトに印刷が行えるので、刷版代がかかりません。仕事替えの手間と時間がなく、損紙も出ません。タッチポイントが減って関わる人間が少なくなれば、ミスやエラーが少なくなり、コストも削減できます。減価償却費用もオフセット印刷機と比べるとはるかに安いので、利益率も向上しました。機械にできることは機械に任せて生産効率を上げてゆけば、結果として残業時間の短縮、働き方改革にもつながります」
脱下請けを目指す長年の営業活動が実り、すでに仕事の半分は県内外の企業・団体との直接取引です。
きっかけはユニカラーにしかできない特殊印刷でしたが、顧客の要望はそれ以外にも広がっています。
こうした顧客ニーズに応えるためには、一般商業印刷も含んだ、責任あるワンストップサービスの生産体制が不可欠で、ハイデルベルグのバーサファイアCV がその一翼を担っています。