滋賀県蒲生郡竜王町に本社/工場を構えるアインズ株式会社は、明治10年の創業以来140年を超える歴史を紡いできた総合印刷会社です。
県内6 ヵ所、県外6 ヵ所の営業拠点を擁し、滋賀県を中心に隣接する福井、三重、京都、さらには大阪、名古屋、東京まで幅広い市場をカバーしています。ビジネス領域も多岐にわたり、企画・デザインからマーケティングコンサルティング、商業印刷物/パッケージ/帳票類のプリント事業、WEB サイト制作やアプリ開発などのデジタル事業、さらにはドローンやクラウドファンディングなど新事業の開拓にも意欲的に取り組んでいます。代理店や同業者を介した下請け仕事はほとんどなく、ほぼ100% がお客様との直取引とのこと。お客様の声を直接聞いて、直接提案できるのがビジネスの強みだと代表取締役社長の大森七幸氏は話しています。
琵琶湖をあずかる滋賀県の企業として環境意識も高く、環境に配慮した印刷にはいち早く取り組んできました。その理由について大森社長は次のように話しています。
「印刷は森林伐採やVOC 排出など環境負荷の大きいビジネスです。そのことを肝に銘じ責任を果たすために、当社では10 年以上前から環境負荷の低減に努めてきました。再生紙や大豆油インキの使用、VOC の低減、作業環境の改善、さらには廃液のでない「水なし印刷」の導入などです。こうした製造現場での負荷を低減する『引き算の責任』を進める一方で、お客様にとってプラスとなる『足し算の責任』にも取り組んできました。具体的には温室効果ガスの排出権がついた水なし印刷『GREENeye』、緑の募金つきエコカレンダー、印刷用紙の購入代金が琵琶湖の環境保全活動に役立つ『びわ湖環境ペーパー』などです。このほかにも、環境重視の様々な取り組みを展開しています」
140 年以上にわたって「時代の変化に対応するDNA」で、確かな成長を続けてきた同社ですが、大森社長の就任直後からリーマンショック(2008 年)、東日本大震災(2011 年)と未曾有の試練が続き、大きな変革を迫られました。
「社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させる力を持つ(ドラッカー)」ことを実感し、「社会に存在意義を認められなければ企業は存続できない」と危機感を持ったのです。
そして社会との関係性を見直すために、客先だけでなく、従業員、取引先、地域社会まで視野に入れたCSR 活動を展開。営業スタイルも自社の商品特性や印刷技術を単に訴求するのではなく、コミュニケーションを支援する印刷会社、すなわちコミュニケーションプラットフォームカンパニーという立場にたって、顧客や社会の課題を解決する提案型へとシフトしてゆきました。
ドローンやクラウドファンディングといった新規事業も地域社会との関わりのなかから必然的に生まれたものでした。このようにCSR を通して企業価値を高め、業績回復につなげた大森社長が次に取り組んだのが、製造現場の改革でした。
同社がハイデルベルグ機(KSB活版印刷機)を初めて導入したのは1965年のこと。以来、KORなどの歴代オフセット印刷機、さらにはアジアパシフィック初の12色機やコールドフォイルモジュール搭載の10色UV印刷機、CtP、中とじ機、ダイカッター、ポーラー断裁機、スタールフォルダー紙折り機などハイデルベルグ・グループの生産設備を数多く導入してきました。
そして今回、「Push to Stop」をコンセプトとしたスピードマスターXL106-8-P LED UV を導入しました。その理由について大森社長は次のように説明しています。
「印刷オペレータは10年で一人前といわれますが、10年後にこの業界がどうなっているのか分からず、人材育成の時間的余裕もありません。また少子高齢化の影響で人手不足は慢性化しています。
将来が予測できない、厳しい経営環境が続く今だからこそ、製造現場では自動化による生産性向上が必須だと感じています。しかもAI機能を搭載したXL106なら若手オペレータでも安心して任せられるので、人材育成の負担も軽減できるでしょう」
同社では2 台の枚葉印刷機(8 色機/ 6 色機)を1 台のXL106 に集約し、「Push to Stop」による完全自動運転を目指しました。導入後の成果は目覚ましく、「生産効率、スピードともにスペック通りだった」と大森社長は喜んでいます。
今まで8色機と6色機を使って丸2日間かかっていたジョブ(平均ロット500枚/50台以上)も、わずか1日で素早く処理できました。生産性は単純計算で従来の4 倍近くにも達します。「LED UV +水なし印刷」という難しい課題にも挑戦中ですが、現場では毎時18,000 枚の最高速をつねに維持するよう努めているそうです。
XL106 は生産性を劇的に高めるだけでなく、同社のビジネス変革の起爆剤にもなると大森社長は期待しています。
「XL106 を中心とするPush to Stop という考え方が、当社のデジタルトランスフォーメーションの起点になりました。工場内の情報伝達をすべてデジタル化してゆくことで、Push to Stopによるスマートファクトリーが実現できます。
さらにインプットを担う営業部門までデジタルでつながれば、スマートカンパニーの実現も夢ではありません。すでにリピートジョブについては受注時点ですぐに工場へと情報が伝わる仕組みも出来上がりました。これにより多忙な営業マンを雑用から解放し、営業本来の仕事である市場創造に集中する環境が整いつつあります。営業スタイルの変革によって、営業拠点の統廃合も視野に入ってきました」
企業のデジタルトランスフォーメーションを推進し、スマートファクトリーからスマートカンパニーへと向かう確かな道筋を示した印刷機…それがハイデルベルグのスピードマスターXL106 だったのです。
アインズ株式会社
〒520-2573 滋賀県蒲生郡竜王町鏡2291-3
TEL.0748-58-8101
FAX.0748-58-8170