愛媛県松山市を拠点に活躍するセキ株式会社は、100年超の歴史を誇る老舗の印刷会社です。
和洋紙販売店として創業してまもなく印刷業にも進出し、以来、全国でも珍しい紙販売業と印刷事業の二本立てでビジネスを牽引。明治、大正、昭和、平成と続く長い歴史のなかでつねにイノベーションを起こし続けながら、商業印刷・書籍印刷だけでなく、パッケージ印刷やカレンダー印刷なども幅広く手がける、四国トップクラスの総合印刷会社へと大きく成長してきました。
主力の伊予工場にはプリプレスから印刷、後加工まで一貫した生産設備を構築。なかでも印刷部門では世界初のA判B判兼用バリアブル輪転機やカレンダー専用印刷機、ハイデルベルグのフラグシップモデル、スピードマスターXL106-8-P-18Kなど合計9台の多種多様で独創的な印刷機が生産を支えています。110周年を迎えた昨年5月には、最新の印刷設備としてハイデルベルグのスピードマスターXL75-8-P LE UV アニカラーも加わりました。
同社が導入したXL75 アニカラーは、省電力LE UV 機能を装備した菊半裁寸のび判の8 色両面兼用印刷機です。
「90-50-50コンセプト(MAX90%の損紙削減、MAX50%の前準備時間短縮、MAX50%の生産性向上)」にもとづいて開発された革命的なキーレスインキング装置アニカラーを搭載し、小ロット印刷の仕事で圧倒的な生産性と収益性を提供します。またカーボンニュートラルで環境負荷が少ないことも、環境配慮型経営を実践する同社の経営方針に合致しました。
このXL75 アニカラーの導入経緯について、執行役員 製造本部 本部長で伊予工場 工場長の関 宏晃氏は次のように話しています。「故障が多く、稼働率も低い老朽化した3台の印刷機をどうにかしたいと考えていました。当初は菊半裁判の4色機と8色機の2台を更新し1台に集約する予定でしたが、菊全判4色機も一緒に出せないかという経営陣からの指摘を受けて、3台を1台に集約する方法を模索しました。ただ通常の試算では仕事が完全にオーバーフローします。唯一条件を満たす印刷機として、色がピタッとあって、準備時間が極端に短いXL75 アニカラーしかないと定め検討を重ねました」
綿密なシミュレーションの結果、菊半2台の仕事はすべてXL75 アニカラーに任せ、菊全機の仕事はXL75 アニカラーとXL106に振り分ければ集約できると判断し、XL75 アニカラーの導入を決断しました。全判の仕事を半裁で行えば、通し枚数は倍になります。それでも「アニカラーならできる」と、関工場長はデジタルとオフセットの間に位置する次世代印刷機の「90-50-50コンセプト」を信じました。こうして2018年5月、伊予工場にXL75 アニカラーが搬入されました。
同社にとってXL75 アニカラーは、初めてのアニカラー機であると同時に、初めてのUV印刷機です。従来とは異なる全く新しい考え方が必要と、導入企業の視察やメーカーによる勉強会など徹底した事前準備を行いました。
導入企業にはオペレータを派遣してアニカラー機の現場研修を実施。UVインキは、油性印刷機とのカラーマッチングを図った独自インキを事前に手配しました。
こうした努力の甲斐もあって、わずか2~3 週間で本格稼働がスタートしました。伊予工場 副工場長の渡邉淳氏は、XL75 アニカラーの運用状況について次のように話しています。
「アニカラー機は仕事を選びません。当社では薄紙から上質、マット、コート、ファンシー系、さらには厚紙まで、様々な用紙をアニカラーで使っています。またUV機なのでクリアファイルなどの付加価値の高い仕事も内製化できました。通し枚数は平均3,000枚程度ですが、100枚から2万枚超まで、小ロットに限定することなく幅広い仕事で運用しています。立ち会いが必要な厳しい仕事になるとXL106の出番ですが、標準的な仕事、短納期の仕事はXL75 アニカラーに任せています」
オペレータも「操作がしやすい」「調整が少ない」「色がすぐに合う」「キズやコスレの心配がない」と絶賛しています。同社では経験の少ない若手や女性スタッフがXL75アニカラーを担当していますが、これは「インキつぼのない全く新しい印刷機だからこそ、先入観なく取り組める若手や女性が良い」という社長の意向でした。
XL75 アニカラーの導入メリットについて、渡邉副工場長は次のように続けています。
「従来の菊半8色機と比べ、前準備時間は半分以下です。4/4色両面印刷では従来機の20分から10分にまで短縮できました。最短なら7~8分で終わります。損紙は4/4色両面印刷で25~30枚、4色片面印刷なら15~20枚ほどで本刷りに移行できます。
以前は100~200枚必要だったので、損紙は1/10に減りました。高価なフィルム原反や高級紙では収益性の向上に確実につながっています」
こうした様々なメリットを勘案すると、XL75 アニカラーの生産性は従来機の2倍以上に達していると関工場長は断言します。当初の計画通り3台を1台に集約しても、仕事がオーバーフローすることは一切ありませんでした。万一に備えて残しておいた従来機も一切動かすことなく、2019年1月にはすべて撤去されました。
現在、XL75 アニカラーの目標OEEは30%です。さらに関工場長は、働き方改革でもアニカラーは効果的だと指摘しています。
「昔のように紙積み10年でやっと印刷機の操作を覚えるようなやり方では、若い人のモチベーションは維持できません。その点、経験3年程度でアニカラー機を担当できれば、やる気も出るし、ものづくりの喜びも感じられます。
まずはアニカラーで経験を積み、マスターした後にXL106にステップアップするというキャリアデザインも可能になり、社員の定着率の向上にもつながるでしょう」
若手社員の意欲を引き出し、収益性を高めて、同社のビジネスを平成から次の時代の「令和」へとつないでゆく印刷機、それがXL75 アニカラーなのです。
セキ株式会社
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伊予工場:〒799-3105 愛媛県伊予市下三谷290 番地1