株式会社金羊社は、創業90 年を超える歴史と伝統を持つ総合印刷会社です。
主力ビジネスであるエンタテインメント(ゲーム・音楽・映像)業界向けのパッケージ製造では国内トップシェアを誇り、LP ジャケットの誕生以来、音楽産業と歩調をあわせて共に成長してきました。ただCD の販売枚数は1997 年をピークに減少を続け、2016 年にはピーク時の約半分にまで落ち込みました。
こうした厳しい経営環境のなか、音楽ジャケットの新しい価値提案を続けると同時に、「CD の売れない時代」を生き抜くため、「何かやらなくては明日がない」という危機感を原動力に新分野への挑戦を続けてきました。
近年ではアーティストグッズの販売、イベント制作、プロモーション、さらには水性フレキソ印刷や建築・建材マテリアルなどの分野にも積極的に進出しています。
ハイデルベルグが革命的なキーレスインキング装置アニカラーを発表したのは2006 年のことです。浅野社長は当時「生産性を大きく向上させる凄い印刷機が出てきた」とアニカラー機を高く評価しました。
しかしサイズが小さくUV 機もなかったため、自社にあわないと導入を見送りました。
それでも菊半裁判のUV 印刷機が出れば、検討の余地はあると、開発を待ち望んでいました。
その理由について浅野社長は、「CD ジャケット市場の変化がある」と次のように指摘しています。
「CD ジャケットの市場は小ロット・多品種化が進んでアイテム数が増加しています。
こうした小ロット化の傾向にアニカラーは最適な印刷機で、生産性向上と利益拡大に確実に貢献すると注目していました」
このため、菊半裁判のアニカラーUV 仕様機が発表されると、すぐに導入に向けた検討が始まりました。
社内プロジェクトチームによる検討結果は「既存の菊半裁判6 色機2 台と入れ替えても圧倒的な生産性が得られる」というもので、2017 年1 月には、待望のスピードマスターXL75-5 UV アニカラーが同社の御殿場工場に設置されました。
代表取締役社長の浅野晋作氏は「歴史ある若い会社」を目指して、今はイノベーションに取り組んでいると次のように話しています。
「5 年先、10 年先の金羊社を考えたとき、今から新しいことに取り組んでゆかないと永続は厳しいと思ってきました。企業の永続的な発展のためには、革新的な事業への投資や挑戦は不可欠です。
歴史ある企業ですが、変えるべきところは大胆に変える、イノベーションを企業風土として大切にする若い企業でありたいと考えています」
「企業の永続に必要なイノベーションを生み出すためには、環境を変えなくてはならない」という考えのもと、浅野社長は中期経営計画「インセプション2020」を策定し、社員の働き方を見直す組織改革を進めています。
採用、教育、評価、キャリアプランのあり方から子育て支援、多様な人材登用を図るダイバーシティまで幅広く取り組み、その成果は女性活躍推進法にもとづく「えるぼし」認定や子育て支援に熱心な企業を認定する「くるみん」取得にもつながりました。
地域社会への貢献と絆を深める企業イベント「いろはフェスタ」も来年で10 周年を迎えようとしています。
危機感から否応なくスタートした同社の企業改革ですが、今では企業のDNA として、しっかり根付いているようです。
インキ選定など入念な準備期間を経て約1 カ月後には、XL75 アニカラーの実運用がはじまりました。
可変印刷やナンバリングが必要な仕事はデジタル印刷機に任せて、それ以外の小ロットの仕事をアニカラーで処理しています。
平均通し枚数は700 枚以下ですが、50 枚から2万枚通しまで、様々なロットの仕事でXL75 アニカラーが活躍しています。
予備紙は従来機と比べて50% 削減でき、コスト削減にも大きく貢献。今後もさらなる削減を目指しています。
現在の仕事内容は4 色+ニスが中心ですが、金や銀などの特色でもアニカラーの特徴を活かす挑戦をしています。
執行役員 生産本部長の猪八重実氏によると、「アニカラー機は従来機2 台分以上の仕事をこなし、さらに余裕が生まれている」とのこと。
生産本部 御殿場工場の長田部長は、XL75 アニカラー機の生産性は従来機と比べ約3 倍にも達していると次のように指摘しています。
「従来機では1 シフト12 時間、20 ジョブが標準でしたが、XL75 アニカラーの場合、1 シフト60 ジョブを下回ることはありません」
実生産で毎時4 ジョブ以上、校正刷りで毎時6 ジョブを実現したXL75 アニカラーの圧倒的な生産性、スピーディな前準備には誰もが満足しているようです。
猪八重本部長は「アニカラーは色が変動しないメンテナンスフリーの印刷機で、色を調整する必要のない印刷機だ」と断言しています。
色調整に手間をかける必要がなければ、時間内に処理できるジョブ件数が増えて残業が減らせます。
今はまだ道半ばですが、近い将来、アニカラーによって残業ゼロが実現できると猪八重本部長は考えています。
生産性向上と利益拡大によって経営を安定させることが、結果として社員の満足と幸せにつながるという浅野社長の経営方針に見事に合致した印刷機、それがハイデルベルグのアニカラーでした。
今後、同社は生産効率の極限まで追求したスマートファクトリー化を目指しています。
生産工程はもちろん、受注から納品まですべての段階でタッチポイントをひとつでも減らすことが目的です。XL75 アニカラーの導入も、スマートファクトリー化の第一歩です。