株式会社大鹿印刷所は、岐阜県揖斐郡大野町に本社を置く老舗パッケージ印刷会社です。1900 年(明治33 年)に創業され、2020 年には創業120 年を迎えます。和洋菓子、食品などの観光土産を中心とするパッケージ関連の多種多様な印刷物を手掛けており、顧客の要望に合わせた商品づくりを設計から納品まで一貫して行う高い生産能力を誇ります。年間28,000点の商品のデザインを手掛ける同社の顧客は全国800社を超えます。
この10 年で商品のサイクルはますます短くなり、「小ロット多品種化へ対応するため、生産現場も変化してきた」と代表取締役社長大鹿道徳氏は言います。観光土産として定着するまでの商品サイクルは非常に短く、パッケージのリニューアルや、新規で作り直すということも多くあります。菓子自体の開発が進み、質が高くなっていくにともない、パッケージもより高級なイメージが求められるようになりました。生産部CTP課課長古田広行氏は「デザインの質や流行に加え、色についてもクライアントは非常に敏感になりました。目視では識別できないくらいの色の違いでもクレームとなる場合もあります」と顧客の要求の変化を指摘します。
ハイデルベルグの提唱するPush to Stop コンセプトを実現する最新のスピードマスターXL106-5 を2017 年に導入し、業界平均を超える高いOEE の達成を実現している同社は、2018 年1 月には2 台目となるXL106-6LX を導入し、前準備時間を短縮し稼働率を上げるための更なる課題に取り組んでいます。
XL106 を導入する前から印刷工程の自動化に着手していた同社は、6年前にコンピュカットを導入し、プリプレスのデータをプリネクトから断裁機に送ることで、断裁の自動化に取り組んでいました。
約20 年前にハイデルベルグのプリネクトを導入して以来、ソフトウェア自体の変化と共にプリネクトの使い方も変化してきたと古田課長は言います。「生産性を向上させるためにはどうしたらよいのか、当時から抱いていた概念は根本的に変わっていません」プリネクトで後工程の作業を効率化することに成功し、現在はさらに印刷機を統合することでPush to Stop の推進はさらに加速しています。「生産性を向上させるためには、高品質の機械を導入するだけではなく、運用自体も変えていかなければいけません」と古田課長はこれまでの取り組みを振り返ります。
リピートジョブが約7 割という同社のパッケージ印刷では、インラインのカラー/見当測定制御システム「プリネクトインプレスコントロール2」が、色合わせの時間と手間の削減に大きく貢献していると、古田課長は評価しています。「XL106 では、Δ E1.0 の範囲内で自動で色を調整するので、印刷機の傍で色をチェックすることも無くなり、オペレータの負担が軽減されました。以前はイメージコントロール2 で測色してフィードバックをしていましたが、インプレスコントロール2 はインラインで管理ができるので安心感があります」と古田課長は安定した印刷品質に自信を見せます。
プルーフとのカラーマッチングにもプリネクトのCMS は大きく貢献しています。同社ではさらに、用紙に合わせて表面加工のシミュレーションをして予めプロファイルを作成することで、顧客から承認を得るプロセスが早くなり、クレームも無くなりました。さらに、高品質印刷を実現するためには、Lab による色管理に加えて定期的なメンテナンスが欠かせないと古田課長は続けます。「印刷機を安定した状態に保ち、常に基準を合わせておかなければ、印刷の自動化は実現できません。システムの性能と機械の性能はどちらも重要です。印刷機本来のポテンシャルを最大限に引き出すために、メンテナンスの時間は惜しみません」
XL106 の1 台目導入後の変化について、大鹿社長は次のように評価しています。「薄紙印刷では1 シフトで24 ジョブをこなします。印刷機2台分の仕事を1台でできるようになりました。
印刷機の能力を最大限に引き出すために、前準備時間削減の様々な取り組みを始めましたが、用紙寸法の統一化もそのひとつです」用紙寸法を統一することで、紙の積替に要する時間が削減されました。XL106 では事前に決めた寸法の用紙を使用し、それ以外の用紙はCD102 で印刷することで、結果的に全体の生産効率が向上します。用紙情報をプリネクトから印刷機に送ることで、前準備時間が30% 削減されました。
さらに、現場に表れた変化について古田課長は次のように説明しながら、運用の重要性を改めて強調します。「用紙の標準化は、XL106 の能力を最大限に引き出すために必要な取り組みでした。導入した当時、ジョブチェンジが1 分半で完了する機械の速さに人間が付いていけず、従来は日報を付けたり次の準備に充てていた時間が無くなったことで、それまでの仕事のやり方を見直す必要性が生まれました。次第に、仕事の優先順位を各自が考え、1 分半の時間で何をすべきなのかが分かるようになりました。印刷速度や切り替え時間は大きく改善されましたが「自動化」というさらなる目標達成には、機械の導入で満足するのではなく、運用の見直しが重要です」
「不良品を作ってはならない」という社員の意識が、変革への強いモチベーションになっています。XL106 を導入してから、「品質を安定させ、生産性を向上させる基盤固めをしている」という同社は、今後のプリネクトの運用についても積極的です。古田課長によると、プリネクトを最大限に活かすためには、印刷機やプルーフなど、まずは根本的な部分を安定させる必要があります。プリネクトからデータをどれほど送っても、それを活用できる環境がなければPush to Stop は実現しません。そのため、現在は「機械とプリネクトを接続し、効率的な運用方法を構築しているところです」と古田課長は言います。
印刷工程の更なる自動化のため、工務の自動化に今後着手する可能性がありますが、生産現場やデザイン、営業といった複数の部署が関わる大きなチャレンジになるだろうと、次の変革を見据えています。一昔前は、集版・製版と呼んでいたプロセスも、印刷機と統合された将来には、その言葉も無くなっているのではないか、と古田課長は指摘します。「機械ができることは機械に任せる」運用でPush to Stop を推し進める同社は、着実な成果を重ねています。
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