創業70年でも、まだ歴史は浅い
日本の歴史をその隅々で感じることができる伝統の町、そして世界中から多くの人が訪れる日本を代表する都市、京都。その京都で製本業を営んできた従業員48名を擁する(2021年7月現在)藤原製本株式会社は、1950年の創業以来、今年で71年を迎えました。その藤原製本株式会社の藤原智之社長は、「京都では創業70 年といってもまだ歴史は浅い。周りを見渡せば100年企業はいくらでもあります。今、私たちも、その100年企業を目指してがんばっています。」と語ります。
同社は、地元の京都府や、滋賀県、愛知県、大阪府の印刷会社や出版会社から発注される教科書やカタログなどを中心に幅広く書籍全般の製本、その周辺事業を主なビジネスとして成長してきました。最近は、出版会社からの仕事が増え、会社としても出版業界の発展に貢献できるようなさまざまなサービスを提供できるように活動を広げています。そのひとつが、2015年のハイデルベルグのデジタル印刷機バーサファイアの導入。出版会社のみならず他のお客様からの小部数短納期の仕事を、印刷・製本と一貫体制で迅速に対応し、従来の製本サービスに加えてお客様に提供できる付加価値的サービスとして成果を上げていると言います。また、藤原製本が大切にしているのが、地域との繋がりです。会社をあげての地域での定期的な清掃活動や、子供たちを工場に招いて”本というものづくり”見学会等を積極的に行い、地域とともに成長する、そして地域に愛される企業を目指しています。
藤原社長は、現在の会社を取り囲む環境について、「多くの製本会社の廃業が新型コロナ感染拡大以前から起こっています。さらにコロナ禍でその傾向は加速したように感じています。私たちの協力会社さんもここ数年で何軒かが廃業しましたし、お客様からも、”今まで頼んでいた製本会社が廃業したからこの仕事をやってくれ“と任されることが増えてきました。しかし、急にお仕事を頂いても、今の時代、従業員に毎日多くの残業をお願いして仕事をこなす時代ではありません。そこで、何か今までとは違う方法でこの環境を乗り越えていかなければならないと思いました。」と課題を挙げています。「 ですから、私たちは、社内の生産性を上げて、できるだけ多くの仕事をこなせるようにすること、そして、外部にお願いしていた仕事をできるだけ内製化し、同時にビジネス全体を拡大していくことを戦略として掲げました。」と会社の方向性を説明します。
しかし、戦略を実行するためには、従来の設備、特に折り機ではオペレータの負担が軽いパレットフィーダを全折り機に採用していたものの、自分たちが望むほどの生産性を上げるのには限界があったと藤原社長は言います。そのような難しさを感じていた際、藤原社長は、ハイデルベルグのポストプレスツアーに参加しました。ヨーロッパの印刷会社を見学し、とても学ぶことが多く強烈な刺激を受けたと言います。「ヨーロッパのさまざまな会社を見学させていただきましたが、どの企業もデジタル化を強く推進、自動化を進め、機械ができることは躊躇なく人手をかけず機械に任せている様子を目の当たりにしました。それを見て、私たちも、できるだけデジタル化、自動化、機械化を進め、”人に優しい企業を目指したい!“と思いました。」と、その時の思いを振り返りました。
そのツアーで藤原社長が見たのが、スタールフォルダーKH82-Pでした。「ヨーロッパのお客様で見たスタールフォルダーKH82-Pの生産性は驚きでした。印刷機の生産性に負けていません。特にそれを実現しているフィーダ、つまり従来のように用紙の間隔をあけることなく重ねてフォルダに給紙するPFXパレットフィーダには一目惚れしました。」と、その時の感動を表現します。そして、会社が掲げる戦略を実現できるのはこの機械しかないと、帰国後すぐに藤原幹明副社長らとともに導入を検討し始めたと言います。そして実際、藤原製本株式会社は、4年のうちに、スタールフォルダーKH82-P(2017)とスタールフォルダーKH82 EOU(2021)の2台を導入しました。
内製化とビジネス全体の拡大という戦略的課題を実現するために導入されたスタールフォルダーKH82は、藤原社長が“従来機の2倍”と表現する生産性で、すぐにその成果を上げたと言います。藤原社長は、「内製化率の向上はもちろんすぐに数字になって現れました。同時に、内製化によって品質も向上し、瞬発的な生産性の向上を実現できたことは会社にとって大変大きな収穫です。」と藤原社長は語ります。
受注の拡大も、“少しずつ”と控えめではあるものの実現しつつあることを実感しています。生産全般を担当する藤原幹明副社長は、「社内では新しい機械の導入によって生産性が上がり時短が実現しています。そして、折り機の中では最高級機として位置づけられる“ハイデルベルグのスタールフォルダーを使う”ということでオペレータのモチベーションも確実に上がったと思います。収益へのプラス面を伴う内製化率の向上はもちろんですが、内製化によって社内の待ち時間が減る等、プロセスがよりスムーズになったことによって、生産全体の効率が大きく向上したことも大きな導入の効果です。また、大きなロットを長時間かけて処理するというオペレータにとってのストレスがなくなったということ、そして、増えつつある少ないロットに対しても切り替え時間が、国産自動セット機と比較して30%以上の時間短縮できたことは、現場に大きなメリットを提供してくれていると思いいます。」と、藤原副社長は説明します。
また、現在は繁忙期だけに限定しているが、1シフトから2シフトへ生産体制の改革を進めており、それに対応するための組織変革を実施、それに伴ってさらに生産能力は飛躍的に拡大し、若いオペレータにより多くの機会を提供できることによって、社内の活性化がより進むという方向性が見えてきたと言います。
以前もハイデルベルグとの付き合いはあったものの、今回の折り機の導入は、実は久しぶりのハイデルベルグとの取引となりました。復活したハイデルベルグとの関係について藤原社長は、「ハイデルベルグと再びお付き合いをスタートしたことによって、海外の情報をダイレクトに入手し、その情報から学んで、社内で活用することができるようになりました。また、ハイデルベルグ・ジャパンの国内のネットワークも活用させて頂き、同業の皆様からも多くを学ぶことができています、私たちも、業界に少しでも貢献するため今後積極的に発信をしていきたい。」と意欲をみせます。
さらに、「私たちが共感しているSDGsの考え方を積極的に会社の活動に取り入れながら、人に優しい企業を目指したい。そのために、生産面だけでなく、出版社をはじめとするお客様にもこうした素晴らしい機械がうちにはあるということをアピールする等営業面でもハイデルベルグの機械をフル活用して、みんなが余裕をもてる会社、人に優しい会社を目指したい。さらに、一貫生産体制を目指し、出版文化がより広がるような活動を進めていきたい。」と、目指す”100年企業藤原製本“の姿を描きながら将来を見つめていました。
藤原製本株式会社
〒 615-8043 京都市西京区牛ケ瀬新田泓町6
TEL.075-381-7509 FAX.075-391-0953
http://fujiwara-bb.co.jp/