当矢印刷株式会社は、明治34年に兵庫県姫路市で創業した「妻鹿燐寸製造所」をルーツとする歴史ある商業印刷会社です。昭和30年にはマッチ製造と共にラベル印刷も手がけるようになりますが、100円ライターの登場によってマッチ産業が急速に衰退。同社も大胆な事業変革を迫られ、オフセット輪転機の導入を契機に商業印刷分野へと進出しました。
その後、埼玉工場の設立・移転・増設、さらにはオフ輪設備の増強などを経て、当矢グループの中核企業へと大きく成長してきました。現在は東京・池袋に本社を構え、埼玉県川越市には6台のオフセット輪転機(B縦全判、B縦半裁、A横全判各2台)を有する埼玉工場(南・北)を擁しています。
6台のオフ輪設備のうち4台には先進のトータルプリンティングシステム「インラインフィニッシュ」を接続し、オフ輪印刷から後加工(折り、のり付け、貼り、抜き、ミシンなど)までワンパス加工の生産ラインを構築。日本でも数少ない、「インラインフィニッシュ」による同社独自のモノづくりで、高度化・複雑化する様々な印刷・加工ニーズに応えています。
「オフ輪の当矢」が誇る圧倒的な生産力、そして「インラインフィニッシュの当矢」ならではの高品質で付加価値の高い加工技術が、同社のビジネスの大きな強みになっています。
インラインフィニッシュの導入によって、同社はオフ輪印刷の付加価値と生産効率を一段と高めることに成功しました。競争が激しく利益の出ないチラシ印刷から脱却し、価格競争に陥ることのない独自性の高い印刷物を数多く受注できるようになりました。ただ受注するすべての仕事が、インライン加工を必要とするものではありません。部数が少なく効率の上がらない仕事やインライン加工では処理が難しい仕事もあり、これらについては協力会社に頼るしかありませんでした。
このため、同社ではインラインフィニッシュの増設と並行して、スタールフォルダー紙折り機を導入しながら、折り工程の内製化にも取り組んできました。今では菊全判クラスを中心に合計7台のスタールフォルダーがオフラインの加工設備として活躍しています。
埼玉工場 工場長の押切稔氏は、導入理由について次のように話しています。「刷り本を協力会社で加工して最終製品を納品するのでは、トラックを寄り道させる横持ちコストがかかります。インライン加工でも、オフライン加工でも社内で一貫処理できれば、コスト削減につながります。また仕事内容にあわせてインラインとオフラインを使い分けることができるので、より柔軟で効率的な生産体制を構築できます」
生産管理部次長の牧野希宣氏は「高い折り精度を求められる仕事が来ても、スタールフォルダーがあれば安心」とその品質を高く評価しています。わずか5年間で7台のスタールフォルダーを導入した同社の実績を振り返れば、その言葉に間違いはないでしょう。
同社が保有する7台のスタールフォルダーのうち、2台(TD66/TH66)には最新の自動デリバリ装置パラミディスdelta703を接続しています。このパラミディスdelta703 は折り丁を数え、一定数量ごとに揃えて積み重ねプレスし、最後に帯掛けして排出する装置です。
通常はデリバリテーブルにサシミ状に排出される折り丁が、きれいに帯掛けされたスタックとして出てくるので、梱包作業などが素早く簡単に行えます。このパラミディスdelta703を導入した理由について、押切工場長はインライン加工での苦い経験があったと振り返っています。「インライン加工の場合、最終製品がオフ輪のスピードでデリバリテーブルに山のように溢れ出してきます。今は自動帯掛け装置を接続していますが、以前は帯掛けと梱包作業のために常時5~6人がデリバリテーブルに張り付いていました。紙折り機でもデリバリ作業を自動化しないと同じことが起こると危惧していました」
最新のスタールフォルダーの生産性は最大230m/minで、A4シートからの二つ折りや巻三つ折りなら毎時30,000~40,000部、多丁出しの仕事なら、さらにその倍以上が生産できます。オフ輪ほどではなくても、デリバリ作業には多くの作業員が必要となり、もし人手がなければ、デリバリにあわせて生産速度を落とすしかなくなります。実際、1台あたり2~3名のデリバリ要員を配置していた同社でも、紙折り機を最高速で動かすことはできなかったそうです。まさにデリバリ作業こそが折り工程のボトルネックだったのです。このボトルネックを解消し、生産効率を飛躍的に高めるため、同社はパラミディスdelta703の導入を決断しました。
パラミディスの導入成果は圧倒的でした。デリバリ要員は3名から1名に削減でき、1台の紙折り機をオペレータと2人で運用できるようになりました。生産スピードも以前の倍以上出せるようになり、紙折り機の生産性は2~3倍へと飛躍的に向上しました。こうした成果を得て半年後には「当てボール紙」の挿入機能がついたパラミディスdelta703 CB-F の追加導入も果たしました。
加工課の安藤課長は「昼勤10時間で80万部、最大86万部の加工実績がある」「昼夜回して130万部を仕上げることもある」とスタールフォルダーの爆発的な生産能力とパラミディスdeltaの処理能力を強調します。もちろん、折りの仕様やサイズ、紙質など仕事内容によって生産量は変わりますが、「外注すると3~4日かかる仕事が、パラミディスなら翌日夕方には仕上がる感じだ」と牧野次長は生産管理の視点からも、パラミディスの生産性を頼りにしています。
「外注コストの削減」「内製化の推進」「ボトルネックの解消」「生産効率の向上」「スキルレス化」「省人化」「省力化」「人手不足の解消」「働き方改革」などなど、長年、人海戦術が当たり前と考えられてきたデリバリ作業を自動化することで、同社は生産現場が抱える様々な課題を一気に解消することができました。
当矢印刷株式会社
本社:〒171-0022 東京都豊島区南池袋2-19-13 当矢ビル
TEL.03-3983-3121(代) FAX.03-3985-5528
埼玉工場:〒350-0833 埼玉県川越市芳野台2-8-8
TEL.049-225-3911(代) FAX.049-223-3310