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2台の打抜き機をダイマトリックス1台に集約化して生産性を飛躍的に高めた精英堂印刷株式会社
最高品質のパッケージづくりにダイマトリックスが貢献
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山形県米沢市に本社を構える精英堂印刷株式会社は、付加価値の高い紙器パッケージ・ラベル・シールの企画から生産まで一貫して手がける紙器パッケージ印刷会社です。2001年には環境マネジメントの国際規格であるISO14001を業界に先駆けていち早く認証取得。さらに2003年にはISO9001、2007年にはグリーンプリンティング工場認定を取得するなど品質管理と環境マネジメントには積極的に取り組んできました。全日本シール印刷協同組合連合会が主催する「シール・ラベルコンテスト」では経済産業大臣賞を3年連続、4度入賞するなど、国内外からその品質は高く評価されています。同社では打抜き工程の生産性と品質を高めるために、ハイデルベルグの打抜き機ダイマトリックス106を3年前に導入しました。今回は同社の代表取締役社長である鈴木髙明氏に、導入の経緯とこれまでの成果、今後の展望などについて、あらためてお話を伺いました。
ダイマトリックスの前準備時間,通常20分、リピートならわずか10分
同社がダイマトリックスを導入したのは3年前のことです。国内2号機となったダイマトリックスを導入した経緯について鈴木社長は次のように語っています。
「目的のひとつは合理化です。古い2ラインの設備を1ラインに集約して、さらに生産性を高めたいと考えました。もうひとつは仕事への対応力です。私たちの仕事内容は時代の流れと共に変わってきました。多種多様な仕事に柔軟に対応できる打抜き機があれば、新しい時代のニーズにもうまく応えられます」
毎時9000回転というスピードを誇るダイマトリックスなら生産性に問題ありません。それだけではありません。鈴木社長が導入を決断する決定的な要因となったのがフィーダ部の構造でした。従来の設備では癖のある板紙などが給紙できずに、打抜き機そのものが緊急停止するというトラブルがあり、オペレータにとっても大きな負担になっていました。しかしダイマトリックスのフィーダには、ハイデルベルグのハイエンド印刷機スピードマスターXL105の卓越した給紙技術が活用されているため、「従来の打抜き機とはまったく違う。これならトラブルはないだろう」と鈴木社長も高く評価して導入を決断しました。
同社では薄物からE段合紙の厚物まで、ロットは数百〜数万枚までと多種多様な仕事を幅広く手がけています。このため仕事替えが頻繁で、セットアップ時間の短縮こそが生産性向上の鍵を握っていました。この点でもダイマトリックスは同社の期待に見事に応えました。
「ダイマトリックスの仕事替えは1日平均10回程度ですが、前準備時間は通常20分以内、リピートの仕事ならわずか10分で終わります。全世界のパッケージ印刷会社を見渡しても5指に入るスピードではないでしょうか」 こう自信を持って語ってくれたのは生産本部紙器加工グループのマネジャーである佐藤博氏です。鈴木社長も次のように話を続けてくれました。
「ダイマトリックスと入れ替えた打抜き機は導入から20年近くが経過していました。昔の機械なので抜型をセットしたり、様々な箇所の締めなど手作業が多く、版交換にかなりの手間を要していました。準備時間は少なくとも30~40分程度かかっていたました。当時と比べると今は夢のようです。生産性も大幅に向上しました」
稼働時の静粛性について評価するのは同社の取締役生産本部長である星川貢氏です。
「毎時9000回転の最高速度で運転しても、とても静かです。以前の機械は最大の7500回転にすると壊れるのではないかという怖い音がしていましたが、ダイマトリックスはそれがなく、とても安心して作業できます」 ダイマトリックス導入のさらに2年前、鈴木社長はドイツのパッケージ印刷会社でブッパ社時代の古いダイマトリックスを実際に見学していました。しかし、実際に導入したダイマトリックスは当時見たものとまったく異なりました。「ブッパ社製のバージョンアップ版を連想していたのですが、当社が導入したダイマトリックスはまるで異次元のもののように感じました」とその印象を語っています。
世界水準の品質と環境性能を両立しながら生産性をさらに高めるダイマトリックス
同社の打抜き工程には合計4台(ダイマトリックス1台、他社製3台)の打抜き機が設備されています。以前は素材ごとに打抜き機を決めていましたが、幅広い素材に対応でき準備時間も短いダイマトリックスを導入してからは、打抜き工程全体の効率化、最適化が進められるようになりました。シフトは2交代制で、繁忙期には3交代制も実施されるとのこと。タッチパネルによるすぐれた操作性、バラツキのないまっすぐな水平搬送方式、上駆動プラテンによる高い打抜き精度などもオペレータの負担軽減、生産性の向上に貢献しています。「以前は搬送時に製品がばらけたりしたが、ダイマトリックスにはそれがない」と星川取締役は語っています。導入当初、搬送部分で発生した問題もダイセットプロ(自動針見当装置)の導入によって解消。導入から約半年後には実生産へと軌道に乗せることができました。
同社は水なし印刷をはじめカーボンフットプリントなど環境問題にも業界に先駆けて取組んでいますが、鈴木社長は環境問題と生産性はリンクしていると指摘します。
「幅広い仕事への対応力、品質の重視、難易度の高い仕事の増加、そして小ロット化などパッケージ印刷に対する日本市場の要求は日々高くなっています。日本での品質要求は高すぎると言う話もありますが、逆に言えば世界最高品質のパッケージは日本でしか作れないという意味にもつながります。こうした厳しい市場で生き残ってゆくためには、生産性の向上が欠かせません。また環境問題に対する解決策を見出していくことが、生産性向上につながることは数値的にも明らかです」
同社の仕事内容は日本酒関係が25%、残りの 75%が工業製品、化粧品、健康食品、医薬品などです。このように食品関係が多いことも、環境問題への取り組みが進んでいる理由のひとつかもしれません。
同社ではパッケージデザインも、企業の競争力を高める重要な要素のひとつとして重視しています。日本酒の場合でも何種類も並んだ棚から消費者に選ばれるためには、ラベル・パッケージのデザインが大きなファクターになります。酒類も実際には主婦、女性が購入することが多く、男性より感性の鋭い女性を意識したデザインになることが多いそうです。このため同社ではデザイン部門を社内に置かず、外部のデザイン会社に依頼しているとのこと。「その方がとてもいいデザインが生まれる」と鈴木社長は語っています。こうした鈴木社長の考えが「シール・ラベルコンテスト」での度重なる受賞歴という確かな成果につながっていることは間違いありません。
夏場のピーク電力 15%削減に向けた取り組み
東日本大震災において米沢市の震度は5強で、仙台市と変わらない強い揺れでした。しかし地盤の強固さに加え、雪国特有の建築基準法で建物強度が高かったためか、同社では機械のズレはなく、止まることもありませんでした。地震発生2時間後の各部門からの報告でも仕事は続けられるとのことでしたが、「余震もあり何が起きるか分からない」ため、その夜の3交代勤務はやめることにしたそうです。週明けの14日、月曜日の朝からは正常に再稼動し、その直後にはハイデルベルグ・ジャパンからも無事を確認する連絡が入りました。これについて「スピーディな対応にとても感謝している」と鈴木社長は語ってくれました。
山形は日本海側から2系統、太平洋側から2系統と合計4系統から電力が供給されているため、「停電もなく、電気面での影響は出なかった(星川取締役)」とのこと。しかし今夏はピーク電力15%削減を目標値として設定して節電対策を進めているそうです。 5月末にハイデルベルグ・ジャパンが開催した「省電力インフォーラム」も「とても参考になった」と星川取締役は語ってくれました。
山形の盆地では夏の気温は35〜 36度にまで達します。これまで工場内は空調を利用して 1年中平均気温 25度、湿度 50%にコントロールしていました。鈴木社長は同社の取り組みについて次のように語っています。
「シフトの見直しはもちろん、屋根全体を反射率の高い塗料に塗り替える。自動販売機を1台止める。器具は使う時だけ電源を入れる。室内の電灯をカットするなど、小さなことでもできることはすべてやろうと思っています。 LEDスタンドに替えると電力使用量は 2〜 3%下がます。室内の蛍光灯もすでに 100本程度間引きました」
さらにスノーボウという同社独自の冷房システムも節電対策に貢献しています。スノーボウとは冬場に降った大雪を貯蔵しておいて、それを事務所の冷房に活用するというシステムで、真夏でも事務所のエアコンが不要になるそうです。
震災の経験を教訓に将来の指針を構築
印刷産業そのものが明確な将来像を描けないときに、東日本大震災という新たな試練を受けて、日本中の印刷会社がこれから経営方針をさらに導きにくくなった今、鈴木社長は同社の今後の展望について次のように語っています。
「紙器パッケージは人々の生活に欠くことのできないものです。プリントメディアのなかでも置き換えられるリスクは少ないと思っています。時代と共に顧客層が変わってゆくということは当然ありますが、パッケージ産業自体が消滅・衰退するとは思っていません。しかし高品質の製品づくり、お客様に支持される企業であり続けるためには、改革が必要です。毎年ひとつひとつ、新しいことを生み出してゆく努力を続けることで、お客様に指名いただけるのだと考えています」 震災による直接的な被害は少なくて済んだ同社ですが、震災後は想像を超える様々な事象に直面しました。しかし幸いなことに顧客に迷惑をかけることはなかったと鈴木社長は胸を撫で下ろしています。それは全社一丸となって取り組んだことはもちろんですが、資材、設備、機械、消費材、ガソリン、電気、ライフラインなど同社に関係する数多くの人々から惜しみない協力を得たからです。「この貴重な体験を教訓として、今後の当社を導く指針を構築してゆきたい」と鈴木社長は将来に向けた決意を最後に語ってくれました。
【企業プロフィール】
精英堂印刷株式会社
代表取締役社長:井上 吉昭
創業:大正4年
従業員数:166名
所在地:山形県米沢市八幡原1丁目1番地16号
TEL:0238-28-2211
URL:http://www.seieido.co.jp/index.html
事業内容:パッケージ・ラベル・シール・営業、企画、デザイン、制作、加工